お祭り騒ぎ


この歳になってまだ学生(それも実生活とはほとんど関係ない分野で・・)やってたりする、ほとんど世捨て人みたいな生活送っている自分が世の中のことについて語ったりすることができるわけもないのですが、あまりにも最近は日本の親類や知人から消息を訪ねる連絡が多いので、さすがにテレビとか新聞とか、そのほかいつもお勉強させていただいている猫屋さんfenestraeさんのブログなんかをみて少しは考えてみたりしてるわけです。



1.メディアの報道状況と大統領選


まず私もすごく感じることは、このフランスの最近の状況は、まさに猫屋さんやfenestraeさんがいわれているように、最近の特別な状況でなく普段から起こっていることで、これまでは三面記事で扱われていたようなことが大々的に扱われるようになってるなぁということです。実際に以前から自分のいる街でも車両放火などの事件はたまに耳にしていました。

... そういった失業者の多い地区での死傷事件や“祭り”的屋外駐車の車への放火は今までにも定期的に起こっています。例年ストラスブール郊外などでは年末に多くの車の放火があります。今年の夏にもトゥルーズ郊外であったような、警官が未成年者を間違って死傷させる事件も多いのです。...(「パリは燃えているか? 燃えてないよ。」ね式(世界の読み方)ブログ


よくわからないなりにまずこれがなぜかを考えてみましたが、これに関連して「フランスの次の大統領選っていつだったっけ?」なんてふと思ったりしていました。なんといっても最近の騒動が始まって以来、次期大統領選でライバルと目されるサルコジさんとド・ヴィルパンさんの露出がやたら多くなってきてますし。。。大統領選の時期に関しては復活したfenestraeさんのところに答えがありました。

... 首相として、あるいは内務大臣として記者会見している場所で、大統領選挙候補として扱うような質問を記者が遠慮なくする。私の知っている過去2回の大統領選挙に比べ、右派に関していえば、今回は1年早くメディアの選挙取材が早まっているとしかいいようがない。...(「早咲の選挙戦を飾る連発花火」fenestrae


来年から実質的な選挙戦が始まるのですね。そういうことからもやはり治安問題を以前から積極的に取り上げてきたサルコジさんにとって、まさに今が株のあげどころと考えているのかもしれません。暴言問題のように逆に人気を落とす危険性もあるのでしょうが。。
来年はオリンピックやワールドカップが行われます。そのような《上》から《下》、《右》から《左》までみんながひとつのことに夢中になってしまう時期が来るまえに郊外の治安問題で成果を上げる・・・なんてことまで彼らが考えたかどうかはわかりませんが、とにかくEU憲法否決後、左派も分裂状態であることだし、各陣営なにかひとつ決め手を作りたいことは確かでしょう。



2.郊外 "banlieues" の問題


フランスには《banlieue》と呼ばれる郊外の衛星都市があります。《banlieue》は通ったことのあるフランス語学学校の授業でも取り上げられるほど、以前から雇用問題、治安問題などが取りざたされているのですが(特にパリの《banlieue》)、最近のこの騒動は日本でも報道されているように、この《banlieue》を中心に起こっているのです。そしてこの騒動の中心にいるのが《banlieue》にある集合住宅街《シテ》で生活する若者たちなわけです。
《シテ》の若者については猫屋さんのところで解説されているので、そちらをご覧になってみてください。

シテ/Cités
これは今回の“暴動”、私としてはできれば“騒動”と呼びたい気がしますが、この動きの起こっている各地の60年代建築の衛星集合住宅街はよくシテと呼ばれます。...(「パリは燃えていないのだが。」ね式(世界の読み方)ブログ


猫屋さんも挙げられている「La Haine "憎しみ"」(1995 マチュー・カソヴィッツ) という映画でシテの様子をみることができると思うので、一度ご覧になることをお薦めします。私もまえにみてからすでに十年ほど経ってしまったので、これを機会に再度見直してみようかと思ってます。ちなみに昨日FNAC(フランスの書籍AV関連チェーン)で確認したところによると、この映画のDVDが16ユーロ代で売ってました。


私もなん度かパリ郊外のシテに迷い込んだことがありますが、ほんとに「La Haine」でみたような感じでした。そこで感じたのが「《banlieue》は一般にいわれるフランスの文化とはまったく違った文化の上に成り立っているんだろうな、、」ということでした。この《文化》ということについてはまったくの素人ではありますが、その素人ですらそういう感覚を得るわけですから、専門家の人たちなら《banlieue》の文化と一般フランスの文化の関係についてたくさん語られていることだろうと思います。これから時間があったら、その辺のこともいろいろみていきたいとは思います。


今回の騒動に関する日本での報道をみてみると、「移民のフランス同化政策」との関連で語られているものもありますが、いまのところ私の受けている感じでは、どちらかというと「《banlieue》文化のフランス同化政策」に対する軋轢みたいな感じです。(あらためてその辺の記事を見たら産經新聞の記事でした・・)

パリ暴動、地方に拡大 移民隔絶、憎悪の悪循環


強行策も融和策も、欧州八方ふさがり
【パリ=山口昌子】アラブ、アフリカ系の移民が多いパリ郊外で二人の少年が感電死した事件をめぐる当局の処理への不信感を引き金に起きた暴動は、失業や貧困、教育や文化の相違などに対する不満や不平を一気に噴出させつつ、フランス各地に拡大してきた。荒れる若者たちによる焼き打ちの炎は、欧州全体を覆う移民問題という難問をあぶり出した形だ。....
(「Yahoo!ニュース - (産経新聞)- 11月6日2時50分更新」より)


たしかに《banlieue》自体がアルジェリア戦争後に大量に移民が流入したことによりできあがり、そこには移民の人たちが多く生活しているのだとは思いますが、いま騒動を起こしている若者たちは、2世や3世であり、ひょっとしたら先祖代々フランス人の人もいるかもしれません。彼らの多くは生まれたときから《banlieue》で生きてきたのであり、親や先祖の国の伝統的な文化とは違う文化の下に生きてきた人たちだと個人的には考えています。上記の記事内にあるように「在来社会と隔絶した場所に押し込められ交流が希薄である」という問題はあると思いますが、それは《banlieue》の問題であって、あまりに《移民》ということに焦点を絞りすぎると、大事なところを見落としてしまうような気もします。
まあこのような社会問題に関しては疎い方なので、あまり発言しすぎて専門の人からなにか指摘を受けるようなことがあるまえに、この辺でやめておいたほうが良いですね。反論受けても返す能力ないですから。。。



3.知人(日本人)たちの反応について


フランス在住の知合いたち(日本人)のブログでも、最近のこの騒動についていろいろ触れられたりしているようです。


「貧民層の若者たちのこの訴え方は承服できん」「彼らの考えていることがわからん」というご意見を見かけました。彼らの身になって考えろとはいいませんが、消費社会にどっぷり浸かってきた日本人としては、彼らのことを簡単に理解することはできないでしょう。あと、彼らがなにかを訴えているのかどうかも定かではありません。個人的には「蓄積されたエネルギーの放出」だとも感じていますが、彼らでなくても一般的に無駄といわれることで蓄積したエネルギーを放出させることは、日本人でもよくやることだと思います。日本人の文化あるいは都市部で生活している人たちの文化の中から彼らの行為を細かく分析することが本当にできるのかもよくわかりません。


「公共交通機関のストップにより、今回の騒動から間接的に被害を受けた」とのコメントもみられましたが、日本人としてはもともとストなどによる交通機関の乱れにはたいへんな思いをしているはずです。たしかに騒動対策としての夜間交通機関ストップではあるのでしょうが、今回の騒ぎにだけ結びつけて考えると、すべての感情がこの騒動の表面だけにむいてしまう恐れもあると思います。


とにかく否定の感情ばかりが先に立つと、周囲の状況に流されてしまうことになるかもしれないので、これからは自分も気をつけていきたいところです。



4.まとめのようなもの


ここまでこの長ったらしい駄文を読んでいただいた方には、結局何がいいたいのかよくわからなかったと思いますが、最初に挙げている猫屋さん、fenestraeさんのブログや、そこで紹介されている様々な記事をみていただけると、現在のフランスで起こっていることがもっとよくわかると思います。


個人的には以下のものをもう一度見直してみようという気になったということで、今回の騒動について考えてみたことが間接的にでもなにがしか役に立ったのかもしれません。


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