汚穢と禁忌

99 Luftballons (Nena)



儀礼としての「てい毛」、美馬達哉(SAFETY JAPAN@日経BP


(…) 文化人類学者のメアリー・ダグラスは、現代社会での不潔は、病原菌の有無という医学や衛生の視点から科学的に説明されているが、実際には伝統社会での文化的・宗教的な価値観とも共通する性質が多いことを指摘している(『汚穢と禁忌』(メアリー・ダグラス著/塚本利明訳、思潮社)など)。

彼女によれば、不潔とは、そもそも科学的な概念ではなく、場違いな場所におかれて調和を乱すものを指している価値的な概念だというのだ。 (…)


日本人女性と結婚してたりつきあってたりするフランス人男性たちから「なぜ日本人の女の子はナニの毛を剃らないのか? きたねーだろ!」とよく聞かれる。彼らにとっては、どうもそれだけは我慢ならんらしい。この手の質問は日本にいた頃、イギリス人にも聞かれたことがある。たしかに欧州(予想するにアメリカや南米も?*1)の女性のほとんどは "とぅるとぅる" か、申し訳程度に残している*2ぐらいのようだ。日本では「日本人女性よりも欧米人女性の方がその辺(腋も含めて)はそのままの姿にしている人が多いんじゃないか」と思い込んでいる場合が多いが、そういったたぐいの話をフランス人にすると、「70年代じゃないんだよ!」と返されたりする。上記の質問をしてくるフランス人に冗談で「 "とぅるとぅる" だとわかめ酒ができないね」といったら思いっきり引かれてしまった。この世のものとも思えない不潔さを感じさせてしまったようだ。フランス人だってあんなこととかこんなこととかするくせに、なぜかナニの毛だけはとんでもなく不潔なものらしい。


先日ここに書いた『生贄婦人』の中にもあったが、にっかつロマンポルノなんかに出てくる女性の "てい毛"というのは、その女性自らによって行われるものではなく男性が行うものがほとんどで、その女性が人前(他の男性の前)で裸になれないよう、その女性の所有権を主張するために行う、あるいは普通の女性が行わないことを強要して恥ずかしい目にあわせるといった場合が多いと思う。
最近の日本人女性はどうなのだろうか? にっかつロマンポルノの時代と同様に、やはり "とぅるとぅる" になっているのは恥ずかしいことなのだろうか?


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なんかお下劣なことをずらずらと書いてしまいましたが、最初にあげたメアリー・ダグラスの『汚穢と禁忌』のフランス語版をいま読んでいて、日本語訳のタイトルとか出版社名とかをメモっておきたかっただけです・・


汚穢と禁忌 (ちくま学芸文庫)

汚穢と禁忌 (ちくま学芸文庫)


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*1:フランスのエステの中には、 "とぅるとぅる" にするコースを「ブラジルスタイル」と名付けているところがあるらしい。

*2:フランス語でなんていうのか忘れたが、縦に細長く毛を残した状態をパリのメトロのチケットの裏側に例える言葉がある。なぜだか知りたい人はこちらを参照のこと