合作映画

先日、日仏両国の映画産業が配給や教育、資金調達などで連携する「日仏映画協力覚書」に調印されたニュースが流れた。

日仏調印:ユニジャパンとフランス映画庁、関係強化で覚書
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/europe/news/20050515k0000m040056000c.html

その協力の第1弾として、辻仁成氏が日仏合作映画を製作することも発表された。これまでも多くの日本映画が欧州でも配給され、日仏の合作映画も製作されいる。なぜこのような覚え書きが必要なのか?と改めて考えてみたりする。これまでは日本の製作会社や製作に関わった企業が個別に対応したりしていて、合作や配給の協力関係を円滑にするために、日本側の窓口を一本化する必要にもせまられていたのだろう。ハリウッド映画に対抗するという理由からもEU各国間ではこのような協力体制はかなり進んでいるようだが、これに日本も国をあげて加わったというところか。。


もっともユニジャパンといえば1957年の設立なので、もっと早くにこのような動きがあっても良さそうにも思えるが、外務省と経済産業省の共管の財団ということで、これらの省庁にとっては日本映画は輸出品として、これまではあまり魅力のないものだったのかもしれない。最近の日本アニメ映画等の欧州での人気で、少し日本映画に対する見方が変わってきたことも推測できる。途中の経緯を確認していないのであくまで推測でしかないが、、、 日本でもさいきんフィルム・コミッションの活動が活発化してきたようなので、そのこともこの動きに拍車をかけたのかもしれない。


日本では「映画」といえばもともとは文部科学省(というか文化庁?)の所管だろうし、ユニジャパンは外務省&経済産業省、聞いたところではフィルム・コミッション関係は国土交通省の所管になるらしい。映画ひとつとっても国が関係してくると複雑になってくる。自分は政策とか難しいことはよくわからんが、今後はこの辺もいろいろと調査して行く必要があるかもしれない。


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このようなことを考えながら、2004年にヨーロッパで公開された映画の中で、日本が製作国として名を連ねる合作映画を調べてみた。その中から以下に3点ほど挙げてみる。
(「LUMIERE / Data base on admissions of films released in Europe」で検索)


ロスト・イン・トランスレーション [DVD]
ロスト・イン・トランスレーション」(2003) は舞台が日本でもあるし、日本との合作なのはよく理解できる。日本を舞台としていて、また企画自体もそれなりと判断できれば、日本での公開を見越して製作に加わる利点はそれなりにあるだろう。



これとは別に、《映像文化の振興に寄与する》という純粋な(?)目的で製作に加わっていたのが「Arimpara(A Story That Begins at the End《English title》 )」(2003) のようである。これはNHKアジア・フィルム・フェスティバルの一環で製作されたもの。この映画はカンヌ映画祭のある視点部門でも上映された。これについては、劇場で上映されたあと(上映されないこともあるかもしれないが・・・)、テレビでの放送権やビデオなどでの販売権を事前に確保するという利点があると思われる。


おもしろかったのが「It's All About Love」(2003) で、(おそらく「Arimpara」と同じような趣旨だと思われるが・・・)松竹が製作に加わっていながら、調べてみたら日本での公開を中止しているようである。松竹の株主でもない限り、出資の理由とともに公開中止の理由を細かく追求することは無理だろうが、IMDbのレビューを見てみても評価があまりよくないし、「企画の段階では面白いと思ったが、このできでは劇場で公開しても赤字になる」と松竹側が判断したことを推測するのが妥当だろう。


松竹の判断をあれこれ詮索することよりも、この「It's All About Love」の製作国に名を連ねる国が多い(デンマークアメリカ/スウェーデン/イギリス/日本/ドイツ/オランダ)のには驚かされる。先にも書いたようにヨーロッパでは合作や配給のための協力関係が強いことからもこのような映画が生まれるのだと思うが、ドグマ95出身のデンマーク人トマス・ヴィンダーベアが監督する映画の資金集めに、誰かが世界中を奔走したのだろう。あまりにも製作に関係した国が多い上に、出演がホアキン・フェニックスクレア・デーンズショーン・ペンなんて、表面上はハリウッド映画みたいな売りになってしまいそうな見かけのために、けっきょく中途半端なできになってしまっているのかもしれない。このような映画のなかでナショナリティ(「オリジン」といった方が適切かな?)がどのように現れてくるのかを確認するためにもぜひ観てみたい映画だったりする。。。